Graduate School of Engineering, Kobe University

工学部Faculty of Engineering

高度な専門的知識と幅広い見識をもった技術者を養成すると共に、研究大学としての神戸大学にふさわしい研究者を養成することを目指しています。

機械工学科専攻・学科HP

持続可能な社会を支えるために「機械」のブレイクスルーに挑戦する

18世紀の産業革命以降、「機械」は目覚ましい進化と普及を遂げ、産業の発展の原動力となり、様々な場面で我々の社会を支えてきました。現在では情報化などの技術の進歩に伴い、ロボットに代表される知能機械やネットワークにつながる情報化機械、これまでは考えられなかった極限環境や微細空間で機能する機械など、エレクトロニクス、バイオ、医療などの関連分野とも融合しながら「機械」の概念はさらに拡大しつつあります。機械工学は、このような機械の発展を支えてきた基礎学問の体系であり、「機械」や「ものづくり」に関する様々な技術は機械工学を専攻した多くの技術者、研究者が創意工夫を重ねてきた努力の集大成です。しかし、大量生産と大量消費による産業の発展は、地球規模のエネルギー・環境問題を引き起こすことにもなりました。したがってこれからの機械工学者は、全地球的な視点に立って科学技術の社会的影響にも考慮しながら、安心・安全で環境への負荷の少ない「持続可能な社会」を実現するために、関連する諸問題を解決する使命を負っているといえます。機械工学科/機械工学専攻は、このような「持続可能な社会」を支えるために、新たな技術革新を生み出す「機械」のブレイクスルーに挑戦し続けるとともに、これからの社会の要請に応えられるような機械技術者・研究者を養成していきます。

持続可能な社会を支える「機械」の例

学科の特徴

機械工学科における学修目標は、将来の科学技術および基幹産業の基盤となり、人類社会の持続的な発展を実現するために必要な機械工学に関する専門的な知識とそれを支える基礎知識および高度な研究開発能力の基礎を身につけることです。このために、当学科では機械工学に関する講義科目が学年進行に応じて基礎から応用へと系統的に用意されており、さらにはこれらの講義科目を補完するために、実習・実験・演習系の科目が充実しているのが特徴です。これにより、機械工学を考える上で基本となる現象を物理的に理解する能力を養います。また最終学年で行う卒業研究を通して、身に着けた専門知識を使って新たな問題を解決する能力を養います。

教員紹介

教員一覧

学科カリキュラム

機械工学科の基本教育方針は、経験に裏打ちされた揺るぎない基礎知識の上に、独創性、応用力、柔軟性を合わせもつ機械工学技術者、研究者を養成することにあります。このため専門基礎科目や専門科目の講義に加え、それらを効果的に補完するために充実した実習・実験・演習を組み入れた特徴的なカリキュラムとなっています。具体的には、まず入学初年次には初年次セミナーや機械工学の面白さを身近に感じられる機械工学基礎などの導入教育から始まり、年次進行に応じて機械工学の基礎から応用、実践へとつながるように専門共通科目が段階的に用意されています。これと平行して2 年次からは、“ 熱・流体”、“ 材料物理”、“ 制御”、“ 設計・生産” といった機械工学の代表的な専門科目についても系統的に配当され、4 年次での研究室配属と卒業研究につながるように配慮されています。またこれら専門科目の講義を補完する機械工学実習、機械製図、機械工学実験、プログラミング演習などの充実した実験・演習系科目が配当されており、これらが当学科での教育の両輪を成しています。また当学科は、「ものづくり」に関わる学生のサークル活動にも積極的な支援を行っています。

学科カリキュラム

授業紹介

機械設計製作演習Ⅰ、Ⅱ(3年生)

機械設計製作演習ⅠおよびⅡでは、簡単な万力を題材として、機械の設計から製作までの一連の流れを体験します。機械設計製作演習Ⅰでは、個々に与えられた要求仕様を満たすように、1年次から3年次までに学んだ材料力学や設計工学の知識を駆使して、万力を構成する部品を設計し、設計した内容についてのプレゼンテーションを行います。さらに、機械設計製作演習Ⅱでは、1年次から3年次までに学んだ機械製図や機械工作に関する知識を用いて、設計した万力を製作するための製作図面の作成と加工工程の検討を行ったのち、少人数のグループにわかれて自分たちが設計した万力を実際に製作します。

この演習を通じて、これまでに講義で学んだ様々な知識を実際のものと結び付けて深く理解できるとともに、自分たちで設計した万力を実際に製作するため、設計者としての自覚と責任を感じることができます。また、実際にものを作るうえで必要となる配慮やチームワーク、そしてものを設計して完成させたときの喜びを実感することができます。

機械創造設計プロジェクトⅠ(3年生)

本科目は、機械製図(JIS機械製図法、機械要素製図)、機械設計製作演習(機械製図から製作までの総合演習)を履修した後に、「製品企画→仕様検討→構想設計→詳細設計・検証」という製品設計の一連の流れを具体的な課題(例:ゴルフボールを1m以上飛ばし、床に設置した紙コップの中に入れる装置を設計せよ)を通して体験する創造設計演習です。この演習は30名程度の少人数クラスで実施され、さらに5名程度のグループ単位で前半は模造紙による検討作業を行い、後半で装置の試作と検証、最後にプレゼンテーションを行います。

本演習は、『目的達成に向けて、論理的にアイデアを具現化する』という設計の本質を体得して「設計って面白い」と感じてもらうことを目的としています。受講生の感想も「自分たちが一から設計するという始めての体験ができ、やりがいがあった」、「グループワークを通じて、自分とは違う意見を聞いて自分が見落としていたものを再認識でき、それらを組み合わせてより良い案を練り上げていくことは楽しかった」、「ついに自分たちが構想した装置が完成した。うまくボールがコップに入ったときの達成感は今でも鮮明に思えている」などと大変好評です。

機械創造設計プロジェクトⅡ(3年生)

機械創造設プロジェクトⅡは、これまでに学習した全ての知識(基礎力学、材料力学、機械力学、熱力学、流体工学、材料工学、制御工学)を総動員して行う機械設計に関する演習科目であり、簡単な機械装置(スターリンエンジン)を設計図に基づいてグループ毎で加工・組立てを行うことで、材料の選択、形状や寸法の決定、公差や精度の決定といった設計の重要性を理解することができます。

演習は、スターリングエンジン動作原理の復習から始まり、部品図の確認と加工法の検討、部品の加工(けがき、旋盤加工、フライス加工、穴あけ加工、手仕上げ)、スターリングエンジンの組立・調整、試運転、製作したスターリングエンジンについての問題点の考察、改良のための考察と試行錯誤を経て、最後に製作したスターリングエンジンについてのプレゼンテーションを行います。

この演習によって、創造性が要求される新規設計を行う能力の修得と機械設計において各種工学知識を活用する能力の修得を目指します。

国際交流

機械工学科/機械工学専攻では、外国人教員の雇用、招聘、教員・学生の研究交流、留学生の受け入れを積極的に推進しています。また当学科・専攻には、アジア、ヨーロッパ等からの多くの留学生が在籍しており、協定によって学部の特定の講義を受講する留学生も毎年入学しています。また、本専攻の大学院生が国際会議等で研究成果を発表する件数も増加しています。さらに博士課程後期課程の学生は、工学研究科のプレミアムプログラムを利用して海外に研究留学しています。

卒業後の進路

情報化が進んだ現代でも、機械工学は産業の基盤的工学として重視され、重工業、電機、自動車関連企業はもちろんのこと、情報・通信、電力、素材、建設、食品などあらゆる産業分野において、研究、開発、設計、生産、維持・管理のための有能な機械技術者が求められており、機械工学科および機械工学専攻には毎年数多くの企業から求人の依頼があります。このような企業に就職した卒業生、修了生は、時代を牽引していく中心的な人材として活躍しています。学部卒業者の7 割超が、より高度な研究・教育を希望して大学院工学研究科博士課程前期課程に進学しており、全国的にも高い進学率を示しています。同博士課程前期課程修了者の1割程度は博士課程後期課程に進学して独創的な研究を行っています。博士課程後期課程修了者は、大学、研究機関、民間企業等で教育、研究、開発、生産など多岐にわたる分野で、その分野での指導的立場として活躍しています。海外からは多くの留学生を受け入れており、卒業・修了後は学部・大学院で得た基礎および専門知識をもとに母国の産業発展に大きく貢献しています。

主な就職先(学部卒業生,大学院修了生を含む)
三菱重工業 日立製作所 トヨタ自動車 安川電機 関西電力
川崎重工業 三菱電機 ダイハツ工業 ファナック 西日本旅客鉄道
IHI パナソニック 日産自動車 小松製作所 全日本空輸
神戸製鋼所 富士通 マツダ 島津製作所 豊田自動織機
日本製鉄 キヤノン スズキ クボタ 日揮
日立金属 セイコーエプソン デンソー ヤンマー
村田製作所 ダイキン工業 旭化成 ブリヂストン 京セラ
ダイヘン 村田機械 三井化学 住友ゴム工業 凸版印刷
住友電気工業

卒業生からのメッセージ

佐藤 有香理
(2014年 学部卒業,2016年 博士課程前期課程修了)

高所解体用の340UHD(Ultra High Demolition)

高所解体用の340UHD(Ultra High Demolition)

小さい頃からものづくりが好きで、自然と機械系の道を進んでいました。ただ、将来ものづくりに携われたらいいなぁと漠然としか考えていなかったので、とりあえず機械工学科を選んだというのが正直なところ。そんな私は現在、キャタピラーという建設重機メーカーで電動ショベルの開発に携わっています。

学部では材料力学、熱、流体、制御などの基礎学問を学べるだけでなく、実験や実習もあり、学んだ知識が何に繋がるのかを意識しやすくモチベーションも上がります。レポートは大変でしたが、友達と協力しながら課題に取り組むのは何より楽しかった記憶です。

私のエゴと偏見かもしれませんが、機械工学科ではどの分野に行っても使える知識の種がたくさん拾えます。その拾った種を少しでも多くまいて、様々な視点を持ったエンジニアになってください。そして、自ら調べて行動する力を身につけて色んな事にチャレンジして欲しいと思います。

竹内 優佳子
(2016年 学部卒業,2020年 博士課程前期課程修了)

第16回レスキューロボットコンテストにて

第16回レスキューロボットコンテストにて

私は2020年3月に博士課程前期を修了しました。大学院在学時は機能ロボット学研究室に所属し油圧駆動ロボットの制御に関する研究を行っていました。また、学部生の頃にはレスキューロボットコンテストチームに所属し、機構設計や製作を行っていました。大学生活を通して感じてきたのはものづくりの楽しさと自分にできることが増える喜びです。ロボットを設計する、材料から部品を加工し組み立て形にする、動かすためのプログラムを組む、といった一連の工程には様々な分野の知識が必要です。また、知識だけでなく実際に経験して初めて理解することもあります。時には試行錯誤的な作業になることもありますがその試行錯誤も楽しいですし、思い通りに動くロボットを完成させた時には何ものにも代えがたい嬉しさを感じます。この嬉しさはロボットに限らずすべてのものづくりに関わる人が感じるものなのではないかと思います。

船橋 駿斗
(2019年3月 博士課程後期課程修了)

私は2019年3月に博士課程後期課程を修了しました。後期課程ではじっくり研究に専念することができ、前期課程(修士)よりも更に高度な研究能力と物事の本質を理解する能力を育むことができました。また、英語論文執筆、国際学会での研究発表や留学支援プログラムによる研究留学などを通じて、国際的に活躍できる人材に成長できたと実感しています。

田代 元
(2012年 学部卒業,2014年 博士課程前期課程修了)

開発したコンバインWRH1200と一緒に

開発したコンバインWRH1200と一緒に

私は(株)クボタで汎用コンバインの設計・開発をしています。汎用コンバインは稲・麦・大豆など様々な作物の収穫を行い、世界中の「食」を支える機械です。近年は自動運転の開発も進めており、私が開発に携わったWRH1200はドラマ「下町ロケット」にも登場し好評を得ました。より良い機械をつくるために奮闘を続ける毎日の中で、やはり大学で得た知識や考え方は大きな財産となっています。そんな私ですが高校時代には「やりたいこと」が特になく、神戸ってオシャレで楽しそう、物理の力学は割と好き、といった程度の理由で大学を選びました。しかし、入学後は目の前の勉強や研究に精一杯向き合い続けた自負はあります。そのために必要な情報と環境は大学が十分に与えてくれました。そして、その日々の積み重ねが今に繋がっています。私と同じように「やりたいこと」が曖昧な人もいると思いますが、神戸大学の機械工学科に進む理由が何かひとつでもあればそれで十分だと私は思います。大事なのはそこで何をするか。神戸大学の機械工学科で様々な経験を積んだみなさんが私たちと一緒に社会で活躍してくれる日を楽しみにしています。

木下 裕貴子
(2007年 博士課程前期課程修了)

開発した電気自動車リーフと一緒に

開発した電気自動車リーフと一緒に

こんにちは。私は2007年3月に博士課程前期課程を修了し、現在は日産自動車株式会社に勤めています。会社ではEVエネルギー開発本部に所属し、電気自動車の動力源であるリチウムイオンバッテリーの開発、設計を行っています。

2010年12月に初めて開発に携わったクルマ”LEAF” が発売されました。日産リーフは走行中にCO2を排出しない¬ 100%電気自動車です。この電気自動車の開発に携わる中で、電気や化学の様々な知識も必要でしたが、モノづくりの基礎となる力学や工学を、大学で学べた事は大変有意義だったと思っています。働きながら勉強する事もまだまだたくさんありますが、基本の考え方を身に着けておくことが重要だと感じています。

開発時、悩むことも多くありましたがリーフを発売でき、充実した気持ちです。今は、街中で走るリーフを見かける事を楽しみにしています。

皆さん自分の成りたい将来像を描いてみて下さい!

岩野 優樹
(2005年 博士課程後期課程修了)

日本機械学会ROBOMEC 03講演会にて(函館)

日本機械学会ROBOMEC 03
講演会にて(函館)

私は、平成17年3月に博士課程後期課程を修了し、現在は明石高専で講師をしています。

学生時代は、機械工学科の研究室で毎日朝から晩までレスキューロボットの研究開発を行っていました。ロボットの製作には、材料を切ったり穴を開けたりする機械加工が必要不可欠ですが、機械工学科は実習工場の設備も充実していて技官の方達には親切丁寧に教えて頂きました。

学科のカリキュラムの中でも様々な機械実習があり、特に鍛造実習は他の大学ではめったに体験できないものだと思います。また、教員の専門性もバラエティに富んでいて学科の中でも様々な分野の勉強ができます。ここ数年校舎の改装も行われたので、新しく充実した設備の中で講義を受け研究に集中できるはずです。

興味のあることには積極的に挑戦し、少しでも早く自分のやりたいことを見つけて、それに没頭し、未来のエンジニア目指して頑張って下さい。