Graduate School of Engineering, Kobe University

工学部Faculty of Engineering

高度な専門的知識と幅広い見識をもった技術者を養成すると共に、研究大学としての神戸大学にふさわしい研究者を養成することを目指しています。

電気電子工学科専攻・学科HP

高度情報化社会を支えるハードとソフトの技術者・研究者育成

電気・電子工学は、産業界はもちろん、日常生活においても必要不可欠な基盤技術となり、その進歩には、目を見張るものがあります。特に、エレクトロニクス分野の技術革新は、スマートフォン、タブレット/ノートPC等の携帯情報機器、コンピュータ、LSI、LED、太陽電池、光ファイバ、新素材などのハードウェアを提供し、これらを結び付ける情報通信ネットワークやソフトウェアの技術と融合して、高度な情報化社会を実現してきました。さらに将来、生体や環境から必要な情報を得るスマートセンサ、高度な判断・制御を行う人工知能などを含めた他の高度技術と融合して、IoT(Internet of Things)時代へ向けて進化・発展する社会に大きな恩恵をもたらそうとしています。

電気電子工学科および電気電子工学専攻では、時代のニーズに応えるべく、電磁気・回路・コンピュータの基礎はもとより、LSI設計、情報通信・暗号理論、サイバーセキュリティ、ウェアラブル機器、量子ドットやナノデバイス・有機材料を応用した新たな素材・素子・センサデバイスの開発と物性、エネルギーの発生・変換および制御と高度化利用などに関する教育研究を行い、優秀な人材の育成と先端的な研究を通じて社会への貢献に努めています。

学びの特徴

電気電子工学科では、IoT時代の到来とともに進化・発展する電気電子工学の新たな展開にも柔軟に対応できる高度な専門基礎学力を持ち、異分野開拓にも率先して取り組む積極性を持つ、学際的で創造性豊かな人材の育成を目指しています。このような新分野開拓のキーマンとなる人材を育成するため、電気電子工学に関わる理論・技術を体系的に捉え、基盤技術となる材料、デバイス、回路技術や、電子情報システム及び電気エネルギーシステムにおける通信、情報処理、制御技術について総合的に教育を行っています。この教育目標を達成するため、基礎から応用まで調和のとれたカリキュラムを編成しています。

1、2年次には、大学における学びについて考える初年次セミナーと、自主的学習・問題解決能力・発想力の体得を目的とした電気電子工学導入ゼミナールにおける少人数教育に始まり、電気電子工学の専門基礎科目として、物理、数学、化学分野の基礎科目が開講されています。並行して1~3年次に専門科目として、電磁気学、電気回路論、電子回路、プログラミング演習、電気電子工学実験などが開講されています。さらに専門応用科目として、量子物理工学、固体物性工学、半導体電子工学などの電子物理工学系科目と、情報理論、計算機工学、データ構造とアルゴリズムなどの電子情報工学系科目、および電力工学、電気機器、制御工学などの電気エネルギー制御工学系科目が開講されています。

所定の単位を修得して4年次に進級すると、電子物理講座、電子情報講座のいずれかの研究室に配属され、卒業研究を行います。博士後期課程への進学も視野に入れて早期に研究に取り組むことを希望する意欲ある3年次生には、所定の条件を満たすことで後期から研究室に仮配属される制度も用意しています。


電気電子工学科のカリキュラム構成

授業紹介

電気電子工学導入ゼミナール

このゼミナールは、新入生にこれから何を勉強するのかを確認してもらうのと共に、研究する楽しみを味わってもらうことを目的としています。 上記の“学びの特徴”の通り、本専攻は電気物理と電子情報のそれぞれの分野で専門的なテーマを研究しています。 従って、「電気電子工学を勉強したい」という志があっても、何から始めたらよいのか戸惑う新入生は少なくありません。 そこで、本ゼミナールでは、電気電子工学の歴史や工学倫理について学び、本専攻における学生生活や学習計画を検討してもらいます。 更に、小中学生の夏休みの宿題で経験したであろう「自由研究」を大学生チームの実力で本気で取り組み、学会と同等のスタイルで、新入生全体で研究成果をポスター発表してもらいます。 フレッシュマンの斬新なアイディアで、教授の先生方をアッと言わせてみませんか?

半導体電子工学

「半導体電子工学」では半導体の基礎から応用について勉強しています。物質は、電気を通す“導体”、電気を通さない“絶縁体”、そして電気の流れ具合をコントロールできる“半導体”にざっくりと分けることができます。半導体は電気の流れ具合をコントロールできるので、コンピュータにおける演算に利用できるだけでなく、光や熱などにも応答します。そのため様々な電子機器で利用され、動作性能を向上させたり、新しい動作を生み出すための研究開発が世界中でしのぎを削って行われています。授業では、このような半導体を自在に操ることができる知識を身に着けるため、最近話題の太陽電池やLEDに利用されている構造を具体的な例にとり、半導体の基礎的な特性から太陽電池の発電やLEDの発光現象に至るまで講義しています。

電力工学

電力工学は歴史のある学問です。その目指すところは、エネルギーとしての電気(電力)を使用者に安定供給することです。私達の日常ではあたりまえに感じるこの目標は決して容易なことではなく、長年にわたって開発・蓄積されてきた莫大な数の技術が利用され、達成されています。そして現在でも、化石エネルギーの枯渇問題や地球温暖化問題に対応すべく、絶え間なく新たな技術開発が進められています。 学部学生の皆さんには、多くの既存技術の中から、重要なもの・基本となるものを中心に理解し、さらには、現状の問題を把握して、新たな技術開発の担い手たるに必要な技術を修得して頂きます。普通の電気電子工学関係の学科では必ず用意される科目で、本学科でも、二つの科目に集約して提供しています。エネルギー問題・環境問題に関心のある方に極めて有用な科目です。

計算機工学

スマートフォンでの動画視聴、天気予報のためのスーパーコンピュータによる流体シミュレーション、これらに共通することは何でしょうか?どこかで耳にしたことがあるかもしれませんが、計算機は、大小に拘わらず、共通してディジタル(0/1)演算を実行しています。そして、四則演算やメモリは論理代数のAND、 OR、 NOT 演算で構成されています。そこで、この授業では、計算機科学の基礎である論理代数とそのハードウェアによる実現である論理回路との関係について習得することを目指しています。ここで得られる知識は、後の学生実験にて、カウンタ回路の設計と実装にて活用されます。講義と実験を通じて、基礎的な論理代数があらゆるコンピュータを司っていることが実感できるでしょう。

国際交流

各国の協定校からの学生を受け入れたり、協定校で取得した単位の読み替えを認めるなど、大学レベルでの国際交流を深めています。

留学生は韓国やマレーシアなどからほぼ例年のように在籍し、国際色豊かな学科となっています。

研究室レベルでは、アメリカ、ドイツ、ニュージーランド、韓国、イギリス、フランスなど、多くの国々の研究機関との共同研究を行っています。

卒業後の進路

卒業後の進路は、電力、電気機器、通信、コンピュータ、情報処理、エレクトロニクス、電気・電子材料等の分野はもちろん、機械、精密機械、化学、鉄鋼、造船、自動車、建設、商社などのあらゆる部門において活躍することになります。さらに高度の教育研究を希望する者は、大学院(工学研究科博士課程前期課程・後期課程)への進学も可能です。

主な就職先(五十音順)

アイシン精機(株)、 旭化成(株)、 (株)NTTデータ、 (株)NTTドコモ、 オムロン(株)、 オリンパス(株)、 (株)カネカ、 川崎重工業(株)、 関西電力(株)、 キヤノン(株)、 京セラ(株)、 (株)きんでん、 (株)クボタ、 (株)ケイ・オプティコム、 KDDI(株)、 神戸市役所、 (株)神戸製鋼所、 コニカミノルタ(株)、 (株)小松製作所、 シスメックス(株)、 (株)島津製作所、 シャープ(株)、 住友電気工業(株)、 ソニー(株)、 ダイキン工業(株)、 中国電力(株)、 中部電力(株)、 (株)デンソー、 トヨタ自動車(株)、 西日本旅客鉄道(株)、 日産自動車(株)、 日本電気(株)、 (株)野村総合研究所、 パナソニック(株)、 阪急電鉄(株)、 (株)日立製作所、 富士ゼロックス(株)、 富士通(株)、 富士通テン(株)、 ブラザー工業(株)、 古野電気(株)、 本田技研工業(株)、 (株)毎日放送、 マツダ(株)、 三菱重工業(株)、 三菱電機(株)、 (株)村田製作所、 ヤマハ(株)、 楽天(株)、 (株)リコー、 ルネサス エレクトロニクス(株)

在学生・卒業生からのメッセージ

好きなことをとことんやる

球体ダンスロボットの展示発表

球体ダンスロボットの展示発表

土田 修平
(2017年博士課程後期課程修了)

私は高校生の頃に、神戸大学のオープンキャンパスに参加し、電気電子工学科を訪れました。先生方による魅力的な講演や在学生による研究紹介などを聞き、自分もこのような環境で学びたいと思い、電気電子工学科を選びました。入学後、数学・物理などの基礎学問から始まり半導体工学、プログラミング、情報通信といった幅広い内容を学ぶことができました。その一方でダンスサークルの活動にのめり込み始め、学部3回生にもなるとほんとに毎日ダンスばかりしていました。学部4回生からは研究室に配属されると共に生活が一転、研究活動中心の生活に変わります。実験システムの構築(プログラミング、回路設計、機械工作)から論文執筆やプレゼンテーション発表など、様々なスキルを要求されました。初めは苦労しましたが、自身の好きなダンスと結びついた研究であったこともあり、だんだん面白さを感じ始め、気づけば研究室に籠もる日が増えていきました。修士・博士課程に上がる頃には、使いこなせるスキルが増え、研究活動に拍車がかかるだけでなく、自身のアイディアでアプリ開発や電子工作に取り掛かるなど、活動の場はより広く、内容はより深くなります。

学習を通して自身が興味を抱いた分野をとことん突き詰める。突き詰めて得た成果は国際会議での発表など、海外での活躍につながる可能性があります。電気電子工学科で知識を学び、興味を突き詰め、世界で活躍するエンジニア・研究者を目指しませんか。

変換効率50%を越える太陽電池の実現

朝日 重雄
(2016年博士課程後期課程修了)

私は、企業で社会人を経験した後、本学科の大学院博士課程後期課程に入学しました。その時に感じたことは、興味があることを好きなだけできるという点です。私の在学中の研究は、変換効率50%を越える太陽電池の実現でした。このような研究は、数年で実用化できるものではなく、リスクもあります。しかし、実現されれば、現在の地球環境問題を解決できるくらいスケールが大きな研究だと考えています。私は在学中、この興味のある研究に対し、とことん取り組むことができました。

また、本人が希望すれば、海外で行われる国際会議で自ら行った研究成果を発表することもできます。私は入学時点では英語による発表の経験はなかったのですが、発表に必要な英語能力、プレゼンテーション能力はネイティブスピーカーや経験豊かな先生方に何度も指導していただいた上で国際会議に臨むことができました。 自分がとことんやっていきたいことが本学科にあるのであれば、ぜひとも入学して他では味わうことのできないすばらしい経験をしてください。

トピックス

環境エネルギーで動作する超低電力LSI設計技術の開拓(電子情報講座 集積回路情報教育研究分野)

半導体集積回路(LSI)の消費電力は素子の微細化と電源電圧の低減によって実現されてきました。LSIの高集積化、高性能化、高機能化が実現され、近年では小型バッテリで数日間動作する電子デバイスが実現されています。

近年、IoT/IoE(Internet of Things/Everything)のキーワードに代表されるように、様々なセンサを活用したセンシング技術が注目されています。これらを実現するデバイスは、超小型で、長期間にわたって「バッテリレス」かつ「メンテナンスフリー」で動作できることが求められ、その骨格をなすLSIを極めて低いエネルギーで動作させる必要があります。図1に示すとおり、このようなLSIが実現できれば、小型環境発電デバイス(ハーベスタ)を用い、太陽光、室内光、温度差、振動、電磁波といった身の回りの微弱な環境エネルギーで動作する小型集積デバイスを実現できると期待されています。しかし、小型ハーベスタは出力電圧が低く、出力電力も限られるため、高効率なパワーマネジメント回路が必要になります。

図1 LSIの消費電力の動向と研究分野:小型環境発電でLSIを動作させる研究を推進

図1 LSIの消費電力の動向と研究分野:小型環境発電でLSIを動作させる研究を推進

そこで、図2に示すとおり、バッテリレス・メンテナンスフリーを特徴としたセンシング応用に向けた高効率パワーマネジメント回路を開拓しました。 MOSFETドライバを利用した高効率チャージポンプ、ナノワットリファレンス回路、低電力レベルシフタ回路を利用した極低消費電力で動作する最大電力追従制御(MPPT)回路を新たに構成することで、完全オンチップ集積した3端子パワーマネジメント回路を開発しました。0.21 V の低電圧で動作を開始し、348μW の出力条件において73.6% の高効率での動作を実現しています。

図2 高効率パワーマネジメント回路のLSIチップ写真

図2 高効率パワーマネジメント回路のLSIチップ写真

計算ナノエレクトロニクスの展開(電子物理講座 ナノ構造エレクトロニクス教育研究分野)

コンピュータ、スマートフォンなどの急速な進化は、それらを構成する部品である電界効果型トランジスタの小型化と高集積化によって支えられてきています。そのトランジスタ1個当たりの大きさは今やナノメートルオーダーのスケールにまで微細化されていますが、このスケールになると、トランジスタを期待通りに動作させる事が困難になるため、その困難を打開する上での様々な工夫が必要になります。そのため、コンピュータを用いたシミュレーションによって得られる特性を元に、より性能の良いトランジスタを設計、提案する、という研究が近年大変重要になっています。ナノスケールトランジスタの動作予測には量子力学を駆使する事が必要であり、このような研究 ~ 計算ナノエレクトロニクス ~ は、ナノスケールでの電子の挙動の解明という、量子物理学の研究とも密接にリンクしています。

我々の教育研究分野では、ナノワイヤなどの新構造、グラフェンなどの新材料、そして様々な新原理に基づくトランジスタ、光デバイスなどのナノエレクトロニクス素子の高性能化を推進させる事を目的に、量子力学に基づくシミュレーション研究、シミュレーション手法の開発を行っています。