工学部Faculty of Engineering
高度な専門的知識と幅広い見識をもった技術者を養成すると共に、研究大学としての神戸大学にふさわしい研究者を養成することを目指しています。
情報知能学は、「情報」を媒体として既存の諸工学分野を有機的に結合し、「知能」による創造的プロセスを追求するとともに、次世代の「知能」化情報システムを創出するこれまでに無い新しい学問領域です。
情報知能工学科では、旧来の学問の壁を打ち破るフロンティア精神に溢れた教育・研究の推進とともに、創造性豊かな思考と研究開発能力をもった技術者・研究者を養成しています。
情報知能工学科の授業科目は、基礎科目と先進的・学際的な専門科目から構成されています。これらの基礎および専門知識を統合・融合することにより、高度情報化社会の様々な技術問題を解決できる能力を養います。
情報知能工学科の学生は,基本的に,システム情報学研究科やイノベーション研究科へ進学することになります。
新しい高機能を備えたシステムを創造できる総合的な技術力がつくように、本学科の授業科目は、数学・物理学などの専門基礎科目と、幅広い分野の先進的かつ学際的な専門科目から構成されています(これらをまとめて共通専門科目と呼んでいます)。特に「現実世界」から「情報世界」までの、情報知能学に関連した内容を体系的に学べる新しいカリキュラムとなっており、そのほとんどが必修科目(全員履修科目)に指定されているのが大きな特色となっています。
また、本学科内には、専門情報処理教育用の計算機システムとして、学生1人あたり1台の利用環境で実験・演習を行うことができるように、高機能ワークステーションが設置されています。
これらの4年間一貫の共通専門科目とともに、基礎教養科目・総合教養科目・高度教養科目の3種類のカテゴリーによる教養科目や外国語などの全学共通の科目を、1学年から4学年にわたって学べるカリキュラムも用意されており、バランスのとれた学習ができるようになっています。さらに、4年生になると卒業研究が始まり、これまで学んできた知識により一層の磨きをかけることができるようになっています。
さらに、これまで大学院向けに実施してきたITスペシャリスト養成コース(enPiT,CloudSpiral)の教育プログラムをアレンジして、2017年度より工学部の学生に向けて展開します。他大学の学生とAI、ビッグデータ、クラウドに関するPBL(Project-Based Learning)を行う実践的な内容になっており、選抜された学生が参加します。
なお、情報知能工学科では、システム情報学研究科や科学技術イノベーション研究科等に所属の教員が本学科の専門教育や研究指導に当たっています。
講義科目 | |||
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計算機概論 | システムモデル | 現象計算 | 知識工学 |
力学基礎1・2 | 常微分方程式論 | 信号解析演習 | マクロ系計算 |
微分積分1~4 | 確率と統計 | ソフトウェア工学 | ミクロ系計算 |
線形代数1~4 | アルゴリズム・データ構造 | 言語工学 | ソフトウェア開発 |
プログラミング演習I・II | データ解析 | 総合実験1 | 総合実験2 |
初年次セミナー | アルゴリズム・データ構造演習 | 総合演習1 | 総合演習2 |
情報・通信ネットワーク | 応用アルゴリズム演習 | ロボティクス | センシングとメカトロニクス |
論理回路 | 複素関数論 | 設計工学 | メディア情報処理 |
離散数学 | 制御工学及び演習 | 電子回路 | 光情報工学 |
応用解析学 | 数理計画及び演習 | 並列計算 | ディジタル信号処理 |
物理学実験1・2 | 信号解析 | 情報数学 | HPC |
電磁気学基礎1・2 | データ解析演習 | オペレーションズリサーチ | 卒業研究 |
電気回路及び演習 | コンピュータシステム1・2 | 現代制御 | |
波動と振動 | 数値解析 | 情報管理 |
海外の大学や研究機関との多数の共同研究実績があります。
国際的な研究集会の企画や開催に多くの教員が参画するとともに、大学院に在籍する学生のほとんどが、これらを始めとする様々な国際学会での研究成果発表を経験しています。
毎年、外国人留学生を受け入れており、その主な出身国は、ウクライナ、オーストラリア、韓国、スウェーデン、中国、ドイツ、ネパール、ブラジル、フランス、ベトナム、ペルー、モロッコ、ラオス、ルーマニアなど、多様な地域にわたっています。
毎年、多数の企業からの求人依頼があり、基幹産業、先端産業である電気・電子・情報・通信・機械関連の製造業を中心に就職しています。
その他、金属・重工・自動車や、電力・ガス、さらには、金融・商社・マスコミから官公庁や教育界まで、あらゆる業種への就職実績があります。
本学科・専攻の卒業生・修了生は、多様化する社会の中で、技術者・研究者・管理者として中心的な役割を果たし、非常に高く評価されています。
なお、学部学生の大多数(70~80%)が、より高度な専門知識を習得し、研究を深めるため、大学院博士課程前期課程に進学しています。
また、博士課程前期課程修了者の約15%が博士課程後期課程に進み、博士号の取得を目指しています。
主な就職先 | |||
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アイテック阪急阪神㈱ | アクセンチュア㈱ | NTTコムウェア㈱ | ㈱NTTデータ |
㈱エヌ・ティ・ティ・ドコモ | ㈱オージス総研 | ㈱オプテージ | ㈱カプコン |
川崎重工業㈱ | 関西電力㈱ | キヤノン㈱ | ㈱クボタ |
KDDI㈱ | ㈱神戸製鋼所 | ㈱コーエーテクモホールディングス | ㈱コナミデジタルエンタテインメント |
コベルコシステム㈱ | ㈱小松製作所 | ㈱島津製作所 | シャープ㈱ |
JFEスチール㈱ | ㈱JSOL | 住友電気工業㈱ | ダイキン工業㈱ |
ダイハツ工業㈱ | TIS㈱ | ㈱デンソー | ㈱デンソーテン |
東海旅客鉄道㈱ | ㈱東芝 | トヨタ自動車㈱ | 西日本電信電話㈱ |
西日本旅客鉄道㈱ | 日鉄ソリューションズ㈱ | 日本電気㈱ | 日本電信電話㈱NTT研究所 |
任天堂㈱ | ㈱野村総合研究所 | パナソニック㈱ | パナソニックデバイスシステムテクノ㈱ |
阪急阪神ホールディングス㈱ | ㈱日立製作所 | 富士通㈱ | 古野電気㈱ |
三菱電機㈱ | ㈱村田製作所 | ヤフー㈱ | ㈱リコー |
ルネサスエレクトロニクス㈱ | ルネサスシステムデザイン㈱ |
相原 龍
(2012年工学部情報知能工学科卒業、2014年博士課程前期課程修了、2017年博士課程後期課程修了)
“人工知能”という言葉が一般的になった今、果たしてどれだけの人がその本質を理解しているでしょうか。
私が2008年に情報知能工学科に入学し博士後期課程を修了するまでの9年間は、機械学習の様々な手法が深層学習に置き換わり、誰も知らなかった人工知能という言葉が急速に世の中に広まっていった時期でした。
在学中はメディア情報講座で音声信号処理の研究をしており、現在も総合電機メーカーの研究所で音声の研究を続けていますが、社内ではAI・人工知能が専門と見なされることも多く、これらの製品化、社会実装のための計画立案や意見を求められることもしばしばです。
人工知能技術の製品化は、私の本来の専門である機械学習・信号処理の知識やプログラミング能力だけでは実現できません。
学部当時は興味がなかったハードウェアの知識は量産化に、何となく聞いていた通信の知識はクラウド上でサービス展開に不可欠であることに後から気づきました。
情報知能工学科では、これらの知識を体系的に学び、最先端の研究者である先生方のサポートの下で研究活動ができます。
先輩や国際学会で出会う研究者との議論もとても刺激的で、物事の本質を考えるきっかけになりました。
ぜひ皆さんもこの素晴らしい環境に、“人工知能”の本質を探しに来てください。
小松瑞果
(2018年工学部情報知能工学科卒業、2019年博士課程前期課程修了、2022年博士課程後期課程修了)
私が学部時代に初めて取り組んだ研究は、地震発生時の避難シミュレーションです。この研究を通じて、情報知能工学科での講義や演習で学んだ論理的思考やプログラミングの技術が、存分に活かされるのを実感しました。これまでに学んだことを駆使しながら、0からモノを作り上げる体験ができたことが嬉しく、本当にこの学科に入って良かったと感じました。卒業研究では、アレルギー疾患のモデリングやデータ解析に取り組みました。免疫学などの勉強に始まり、数理モデリングや数値計算に取り組む中で、次から次へと解決すべき問題が現れました。問題解決のためには、シミュレーション技術やデータ解析に関する深い知識が必要であり、大変ではありましたが、やりがいを感じました。また、所属研究室では、最先端のスーパーコンピューターを用いた研究や、物理学・心理学分野などにおける諸問題への数理科学的アプローチに取り組む先生方や先輩方と接する機会にも恵まれ、学部生ながらも非常に広い世界を知ることができました。このように、専門性を深めながらも広い視野を身につけられるのは、情報知能工学科の魅力の一つです。このような経験は、研究ではもちろん、研究以外のその後の進路においても、きっと役に立ち、人生を豊かにすることと思います。
当学科では、情報知能学に関する様々な先端的研究が行われていますが、ここではその中から各講座より一つずつ研究トピックスをご紹介します。
いま、日本の農業は大きな岐路に立たされています。農村部における人口減少と超高齢化、40%を下回り続けている低い食料自給率、そして球温暖化をはじめとする気候変動の影響など、様々な問題が押し寄せています。
一方で、2015年には890兆円であった世界主要国の飲食料市場規模が2030年には1,360兆円へと1.5倍以上の拡大が見込まれていることなどから、競争力強化を図ることで日本の農業をグローバル展開する好機と見る向きもあります。
そこで、大きな期待が寄せられているのが、ロボット技術やICT(情報通信技術)、AI(人工知能)技術などの最新テクノロジを利用して農業にイノベーションをもたらす「スマート農業」です。
私たちの研究室では、農業現場から得られる多種多様なデータの知的処理により、農業を効率化するしくみについて、学内外の専門家と一緒に研究しています。
例えば、畑の作物を対象として、カメラ画像から推定された草丈・花数などの生育データや、センサで取得された気温などの環境データをもとに、データマイニング技術を用いることで熟練農家の知恵やノウハウを顕在化させる手法を開発しています。
これによって、効果的な農作業のヒントの提供や、次世代への円滑な技術継承を可能とします。
また、無線センサデバイスを用いて牛同士のインタラクションを検知することで放牧牛の行動や健康状態を分析したり、深度画像と深層学習を利用して子牛の発育状態を自動管理したりなど、最新のデバイスやデータ処理技術を活用した研究にも取り組んでいます。
大川剛直 教授(知的データ処理分野)
コンピュータによるシミュレーションは、理論、実験に次ぐ第三の科学として様々な科学・工学分野で活用されています。
我々は、「京」に代表されるハイエンドスパコンを活用し、熱・流体運動を高精度に予測する大規模シミュレーション技術を開発することで複雑な物理現象を解明すると共に、その技術を産業界で活用・展開するための研究開発を行っています。
例えば自動車の開発では、自動車に作用する空気の力(空力)を高い精度で求め、燃費を予測、向上することが強く求められています。
また、空力は、高速走行する自動車の安全性にも大きく関わります。今まではこういった空力予測には、風洞を用いた実験が行われてきました。
ここに大規模空力シミュレーションを適用することで、風洞実験に匹敵する精度での空力予測を、高速かつ低価格で実現できるばかりでなく、風洞では計測が不可能な、追い越しやすれ違いといった実走行状態での自動車の走行安全性評価が可能となります。
坪倉 誠(計算流体分野)
従来は、パソコンやプリンタ、スマートホンなどのIT関連機器が接続されていたインターネットに、それ以外の様々なモノがつながるようになりました。
例えば、家庭内の家電製品をインターネットにつなげることで、外出中もスマートホンで操作ができます。また、玄関にとりつけた防犯カメラの様子をいつでも見ることも可能です。
このように多くのものがつながる時代で重要となるのが、つながっている全てのモノを、大勢の人が生活する社会全体でどのようにうまく使いこなすかということです。
そのようなスマートな社会の実現には、ネットワークでつながっているシステム全体を賢く上手に計画することが重要な課題となります。
そこで我々は、ネットワークにつながる個々の要素に人工知能(ソフトウエアエージェント)を搭載し、それぞれがネットワークを使って通信・交渉・制御することで、システム全体をスマートに計画し運用する研究を進めています。
例えば、このシステム計画技術をモノづくりに応用することで、今までにない賢くてスマートな工場(スマートファクトリー)が実現され、消費者ひとりひとりの好みに応じた様々なカスタマイズ製品を、適切な価格で提供することが可能になり、製造立国日本におけるモノづくりを支援することができます。
また、ツイッターやフェースブックなどのSNSを用いた情報の広がり方をシミュレーション手法で解析したり、リーマンショックのような突発的なリスクに負けない金融ネットワークを設計するなど、大規模なシステム内の様々な問題に対して、様々なシステム最適化手法を用いた問題解決を行なっています。
貝原俊也 教授(システム計画分野)