Graduate School of Engineering, Kobe University

工学研究科Department

工学研究科は、環境共生型持続的発展社会の構築に直結する工学知識・基盤技術・応用技術を創造し社会還元することをめざす教育研究組織です。

システム情報学研究科(情報知能工学科)

次世代知能化情報システムの創出を目指して

情報知能学は、「情報」を媒体として既存の諸工学分野を有機的に結合し、「知能」による創造的プロセスを追求するとともに、次世代の「知能」化情報システムを創出するこれまでに無い新しい学問領域です。

情報知能工学科では、旧報知能工学科の授業科目は、基礎来の学問の壁を打ち破るフロンティア精神に溢れた教育・研究の推進とともに、創造性豊かな思考と研究開発能力をもった技術者・研究者を養成しています。

情報知能工学科の教育の特色

システム情報学研究科の博士課程前期課程では,システム科学・情報科学・計算科学の各専攻分野に関する幅広い知識及び学際的視点を有する創造性豊かな高度専門職業人を養成します。

博士課程後期課程では,自ら問題を設定・探求・解決できる高度な課題探求能力,豊かな創造性と国際感覚を有する研究者・高等教育研究機関の教員・高度専門職業人等を養成するための教育研究を行います。

さらに,専門科目の複数教員担当制や研究科横断科目の導入によって高度な専門性とともに広範な視野を身に付けた人材を養成します。

カリキュラムの特色

前期課程では,システム情報学研究科の各専攻分野における幅広い知識及び学際的視点を有する人材,特に新興領域・融合領域での問題解決に肝要となる複眼的視野を有する創造性豊かな高度専門職業人を養成するための教育研究を行うことを目的とします。

後期課程では前期課程の教育を更に発展・深化させるとともに,自ら問題を設定・探求・解決できる高度な課題探求能力,新たな知識・価値の創出に寄与する豊かな創造性と国際感覚を有する研究者・高等教育研究機関の教員・高度専門職業人等を養成するための教育研究を行います。

専攻構成・研究の紹介

システム情報学研究科は3つの研究分野より構成され,それぞれ特色ある研究内容と,分野を超えた連携による幅広い領域の研究が進められています。

「システム科学分野(専攻)」

機械・電気システムや情報・社会システムなど大規模・複雑なシステムを対象に,アナリシスとシンセシスを効果的に実践するシステムズ・アプローチと問題解決能力を身に付け,限られた専門分野の深化のみならず異分野間の統合化を通じて新たな理論や技術・方法論を創造することができる研究者や高度技術者を養成します。

[教育研究分野]
システム計画,システム設計,システム計測,システム制御,システム数理,システム構造,システム知能,応用システム

「情報科学分野(専攻)」

情報科学に関する基礎理論やその社会的応用に至る広範な学術領域において,基盤としてのコンピュータやネットワークの素養をベースに,価値ある情報の創出,表現,収集,蓄積,伝達,処理,利用など,広い視野を持ち指導的な役割を果たす能力を備えた研究者や高度専門技術者を養成します。

[教育研究分野]
情報数理,アーキテクチャ,ソフトウエア,情報通信,情報システム,知的データ処理,メディア情報,創発計算,感性アートメディア

「計算科学分野(専攻)」

スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーションによる基礎科学の探究と、先進的アルゴリズムや可視化手法等の研究開発を通じて、次世代の計算科学を担う研究者・技術者を養成するとともに、計算機シミュレーション手法を身につけて幅広い分野で社会に貢献する視野と能力を持った人材を養成します。

[教育研究分野]
計算基盤,計算知能,計算流体,シミュレーション技法,計算分子工学,計算生物学,計算ロボティクス,計算宇宙科学, 応用計算科学,大規模計算科学


詳しくは「システム情報学研究科ホームページ」をご確認下さい。

国際交流

海外の大学や研究機関との多数の共同研究実績があります。

国際的な研究集会の企画や開催に多くの教員が参画するとともに、大学院に在籍する学生のほとんどが、これらを始めとする様々な国際学会での研究成果発表を経験しています。

毎年、外国人留学生を受け入れており、その主な出身国は、ウクライナ、オーストラリア、韓国、スウェーデン、中国、ドイツ、ネパール、ブラジル、フランス、ベトナム、ペルー、モロッコ、ラオス、ルーマニアなど、多様な地域にわたっています。

卒業後の進路

毎年、多数の企業からの求人依頼があり、基幹産業、先端産業である電気・電子・情報・通信・機械関連の製造業を中心に就職しています。

その他、金属・重工・自動車や、電力・ガス、さらには、金融・商社・マスコミから官公庁や教育界まで、あらゆる業種への就職実績があります。

本学科・専攻の卒業生・修了生は、多様化する社会の中で、技術者・研究者・管理者として中心的な役割を果たし、非常に高く評価されています。

なお、学部学生の大多数(70~80%)が、より高度な専門知識を習得し、研究を深めるため、大学院博士課程前期課程に進学しています。

また、博士課程前期課程修了者の約15%が博士課程後期課程に進み、博士号の取得を目指しています。

主な就職先
アイテック阪急阪神㈱ アクセンチュア㈱ NTTコムウェア㈱ ㈱NTTデータ
㈱エヌ・ティ・ティ・ドコモ ㈱オージス総研 ㈱オプテージ ㈱カプコン
川崎重工業㈱ 関西電力㈱ キヤノン㈱ ㈱クボタ
KDDI㈱ ㈱神戸製鋼所 ㈱コーエーテクモホールディングス ㈱コナミデジタルエンタテインメント
コベルコシステム㈱ ㈱小松製作所 ㈱島津製作所 シャープ㈱
JFEスチール㈱ ㈱JSOL 住友電気工業㈱ ダイキン工業㈱
ダイハツ工業㈱ TIS㈱ ㈱デンソー ㈱デンソーテン
東海旅客鉄道㈱ ㈱東芝 トヨタ自動車㈱ 西日本電信電話㈱
西日本旅客鉄道㈱ 日鉄ソリューションズ㈱ 日本電気㈱ 日本電信電話㈱NTT研究所
任天堂㈱ ㈱野村総合研究所 パナソニック㈱ パナソニックデバイスシステムテクノ㈱
阪急阪神ホールディングス㈱ ㈱日立製作所 富士通㈱ 古野電気㈱
三菱電機㈱ ㈱村田製作所 ヤフー㈱ ㈱リコー
ルネサスエレクトロニクス㈱ ルネサスシステムデザイン㈱

Message 在学生・卒業生からのメッセージ

“人工知能”の本質がわかる人材に

相原 龍
(2012年工学部情報知能工学科卒業、2014年博士課程前期課程修了、2017年博士課程後期課程修了)

“人工知能”という言葉が一般的になった今、果たしてどれだけの人がその本質を理解しているでしょうか。
私が2008年に情報知能工学科に入学し博士後期課程を修了するまでの9年間は、機械学習の様々な手法が深層学習に置き換わり、誰も知らなかった人工知能という言葉が急速に世の中に広まっていった時期でした。
在学中はメディア情報講座で音声信号処理の研究をしており、現在も総合電機メーカーの研究所で音声の研究を続けていますが、社内ではAI・人工知能が専門と見なされることも多く、これらの製品化、社会実装のための計画立案や意見を求められることもしばしばです。
人工知能技術の製品化は、私の本来の専門である機械学習・信号処理の知識やプログラミング能力だけでは実現できません。
学部当時は興味がなかったハードウェアの知識は量産化に、何となく聞いていた通信の知識はクラウド上でサービス展開に不可欠であることに後から気づきました。
情報知能工学科では、これらの知識を体系的に学び、最先端の研究者である先生方のサポートの下で研究活動ができます。
先輩や国際学会で出会う研究者との議論もとても刺激的で、物事の本質を考えるきっかけになりました。
ぜひ皆さんもこの素晴らしい環境に、“人工知能”の本質を探しに来てください。


深い学識と広い視野で社会を・人生を豊かに

小松瑞果
(2018年工学部情報知能工学科卒業、2019年博士課程前期課程修了、2022年博士課程後期課程修了)

mkomatsu私が学部時代に初めて取り組んだ研究は、地震発生時の避難シミュレーションです。この研究を通じて、情報知能工学科での講義や演習で学んだ論理的思考やプログラミングの技術が、存分に活かされるのを実感しました。これまでに学んだことを駆使しながら、0からモノを作り上げる体験ができたことが嬉しく、本当にこの学科に入って良かったと感じました。卒業研究では、アレルギー疾患のモデリングやデータ解析に取り組みました。免疫学などの勉強に始まり、数理モデリングや数値計算に取り組む中で、次から次へと解決すべき問題が現れました。問題解決のためには、シミュレーション技術やデータ解析に関する深い知識が必要であり、大変ではありましたが、やりがいを感じました。また、所属研究室では、最先端のスーパーコンピューターを用いた研究や、物理学・心理学分野などにおける諸問題への数理科学的アプローチに取り組む先生方や先輩方と接する機会にも恵まれ、学部生ながらも非常に広い世界を知ることができました。このように、専門性を深めながらも広い視野を身につけられるのは、情報知能工学科の魅力の一つです。このような経験は、研究ではもちろん、研究以外のその後の進路においても、きっと役に立ち、人生を豊かにすることと思います。


TOPICS 情報知能学研究トピックス

当学科では、情報知能学に関する様々な先端的研究が行われていますが、ここではその中から各講座より一つずつ研究トピックスをご紹介します。

スマート農業

いま、日本の農業は大きな岐路に立たされています。農村部における人口減少と超高齢化、40%を下回り続けている低い食料自給率、そして地球温暖化をはじめとする気候変動の影響など、様々な問題が押し寄せています。
一方で、2015年には890兆円であった世界主要国の飲食料市場規模が2030年には1,360兆円へと1.5倍以上の拡大が見込まれていることなどから、競争力強化を図ることで日本の農業をグローバル展開する好機と見る向きもあります。
そこで、大きな期待が寄せられているのが、ロボット技術やICT(情報通信技術)、AI(人工知能)技術などの最新テクノロジを利用して農業にイノベーションをもたらす「スマート農業」です。

私たちの研究室では、農業現場から得られる多種多様なデータの知的処理により、農業を効率化するしくみについて、学内外の専門家と一緒に研究しています。
例えば、畑の作物を対象として、カメラ画像から推定された草丈・花数などの生育データや、センサで取得された気温などの環境データをもとに、データマイニング技術を用いることで熟練農家の知恵やノウハウを顕在化させる手法を開発しています。
これによって、効果的な農作業のヒントの提供や、次世代への円滑な技術継承を可能とします。
また、無線センサデバイスを用いて牛同士のインタラクションを検知することで放牧牛の行動や健康状態を分析したり、深度画像と深層学習を利用して子牛の発育状態を自動管理したりなど、最新のデバイスやデータ処理技術を活用した研究にも取り組んでいます。

大川剛直 教授(知的データ処理分野)

大規模熱流体シミュレーション

コンピュータによるシミュレーションは、理論、実験に次ぐ第三の科学として様々な科学・工学分野で活用されています。
我々は、「京」に代表されるハイエンドスパコンを活用し、熱・流体運動を高精度に予測する大規模シミュレーション技術を開発することで複雑な物理現象を解明すると共に、その技術を産業界で活用・展開するための研究開発を行っています。
例えば自動車の開発では、自動車に作用する空気の力(空力)を高い精度で求め、燃費を予測、向上することが強く求められています。
また、空力は、高速走行する自動車の安全性にも大きく関わります。今まではこういった空力予測には、風洞を用いた実験が行われてきました。
ここに大規模空力シミュレーションを適用することで、風洞実験に匹敵する精度での空力予測を、高速かつ低価格で実現できるばかりでなく、風洞では計測が不可能な、追い越しやすれ違いといった実走行状態での自動車の走行安全性評価が可能となります。 

坪倉 誠(計算流体分野)

スパコン「京」による大規模自動車空力シミュレーション

スパコン「京」による大規模自動車空力シミュレーション

システム計画

従来は、パソコンやプリンタ、スマートホンなどのIT関連機器が接続されていたインターネットに、それ以外の様々なモノがつながるようになりました。
例えば、家庭内の家電製品をインターネットにつなげることで、外出中もスマートホンで操作ができます。また、玄関にとりつけた防犯カメラの様子をいつでも見ることも可能です。
このように多くのものがつながる時代で重要となるのが、つながっている全てのモノを、大勢の人が生活する社会全体でどのようにうまく使いこなすかということです。
そのようなスマートな社会の実現には、ネットワークでつながっているシステム全体を賢く上手に計画することが重要な課題となります。
そこで我々は、ネットワークにつながる個々の要素に人工知能(ソフトウエアエージェント)を搭載し、それぞれがネットワークを使って通信・交渉・制御することで、システム全体をスマートに計画し運用する研究を進めています。
例えば、このシステム計画技術をモノづくりに応用することで、今までにない賢くてスマートな工場(スマートファクトリー)が実現され、消費者ひとりひとりの好みに応じた様々なカスタマイズ製品を、適切な価格で提供することが可能になり、製造立国日本におけるモノづくりを支援することができます。
また、ツイッターやフェースブックなどのSNSを用いた情報の広がり方をシミュレーション手法で解析したり、リーマンショックのような突発的なリスクに負けない金融ネットワークを設計するなど、大規模なシステム内の様々な問題に対して、様々なシステム最適化手法を用いた問題解決を行なっています。

貝原俊也 教授(システム計画分野)