Graduate School of Engineering, Kobe University

研究成果Achievement

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2022年06月27日

空気中高温下でも安定動作する熱電発電素子用カーボンナノチューブのn型ドーピング物質を発見 〜有機超塩基の構造と機能〜

概要

 将来のエレクトロニクスやエネルギーデバイスの素材として、カーボンナノチューブに代表されるナノカーボン材料が注目されています。中でも、熱を電気に変換する熱電発電は、日常生活や工場などで発生する廃熱を回収し、電気エネルギーとして再利用する環境発電技術(エナジーハーベスター)として期待されています。熱電発電においては、p型特性とn型特性を示す半導体を交互に配列することで、起電力を増幅させる工夫がなされます。ゆえに、p型とn型の半導体特性を示す両材料が必要となります。しかしカーボンナノチューブの場合、空気暴露に伴う自然酸化効果によってp型特性を示しやすい一方、空気中高温下で安定なn型特性を発現させることが困難でした。

 カーボンナノチューブの半導体特性をp型やn型に制御する技術は、ドーピング(微量な化学物質をカーボンナノチューブに添加して半導体特性を制御すること)と呼ばれ、世界中でn型ドーピング物質の探索研究がなされています。特に、熱電変換素子は高温下で利用されるため、空気中100℃以上の環境下でも長期にわたってn型特性を発現しうるドーピング物質の開発が切望されていました。

 神戸大学大学院工学研究科の石田謙司教授、堀家匠平助教、小柴康子助手、産業技術総合研究所の衛慶碩主任研究員、赤池幸紀主任研究員らの研究グループは、カーボンナノチューブに安定なn型伝導特性を付与するドーピング物質として、有機超塩基が有効であることを新たに発見しました。

 有機超塩基の溶液に、カーボンナノチューブをわずか5分浸漬するだけの極めて簡便な処理によって、カーボンナノチューブの半導体特性がp型からn型へと変化することを発見し、またそのn型特性は、空気中100℃において半年以上の長時間にわたり持続する驚異的な安定性を備えていることがわかりました。さらに、開発したn型カーボンナノチューブをシート状に加工し、p型シートと交互に接続することで、良好な発電特性を示すオールカーボンナノチューブ熱電発電素子の創出に成功しました。

 今後、本技術を応用することで、熱電変換素子以外にも、光センサ、トランジスタなど有機エレクトロニクス素子の開発に大きく貢献することが期待されます。

 この研究成果は、2022620日、Nature Communicationsにオンライン掲載されました。

 

論文情報

タイトル:“Bicyclic-ring base doping induces n-type conduction in carbon nanotubes with outstanding thermal stability in air”

著者:Shohei Horike, Qingshuo Wei, Kouki Akaike, Kazuhiro Kirihara, Masakazu Mukaida, Yasuko Koshiba & Kenji Ishida

掲載誌:Nature Communications 13, Article number: 3517 (2022) 

 

関連リンク

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