ごあいさつ・ビジョン

ごあいさつ

神戸大学 工学研究科長・工学部長

小池 淳司

Prof. KOIKE Atsushi


 神戸大学工学部は、1921(大正10)年に建築科、電気科、機械科の3科から構成される旧制神戸高等工業学校として設立され、2021(令和3)年12月に創立100周年を迎えます。その間、建築学科、市民工学科、電気電子工学科、機械工学科、応用化学科、情報知能工学科の6学科へと発展し、3万余名にのぼる卒業生の多くが、技術者、経営者、研究者として国内外の民間、国、地方公共団体で広く活躍しています。神戸大学工学部では、創立以来の伝統である自由闊達な気風を保ち、学生諸君はのびのびと勉学、研究に励んでいます。

 ここで、創立100周年を迎えるにあたり、神戸大学工学部・大学院工学研究科、大学院システム情報学研究科が今後あるべき姿について考えてみたいと思います。私たちの先人たちは、何度となく失敗を繰り返し、時に一心不乱に、時に遊び心を取り入れて、新しいモノづくりに挑戦してきました。しかしながら、昨今はややもすると、教育や学術研究においても投資効率が重視され、ワクワク、ドキドキするような萌芽的や挑戦的な活動に対して、社会からの支援が十分なされなくなってきており、創造的な発想もなかなか生まれなくなっているように思います。そこで私たちは、工学および工学教育の基本に立ち返り、失敗や多様性を許容して、ワクワク、ドキドキするような内なる動機付けによってこそ真の創造性が生まれること、そして、創造性は無からは生まれず、基礎学力や知識が必要であることを再認識し、これらをしっかり体現することが大学の役割であると決意を新たにいたしました。さらに、そのような創造的研究や基礎教育を実行するためには、世界中から知を求めて多くの人たちが集うような「知の拠点」となる仕組み作りが大事であると考えています。

 工学の使命は、実社会の問題を解決するために自然界の原理を追求し、そこで得られた知見を実社会に役立てることにありますが、これからは地球環境と共生できる持続的社会の構築に貢献しなければなりません。工学は、単にモノをつくるのではなく、そのモノによって人々が享受するサービス=コトまでを考えるべきだと言われて久しいですが、さらにこれからは、特定の人々の短期的な幸せではなく、地球規模での持続可能なしあわせを追及すべきではないでしょうか。

 このような背景のもと、工学部創立100周年を迎えるにあたって、私たちは、開学の精神である「学務と実務の両立とこれを支える自主的研究の尊重」を重んじ、ここに次の100年に向かって前進していくための工学部・工学研究科のビジョンを策定いたしました  (ビジョンの全文は、「ビジョン」のページをご覧ください)。


世界とつながる「知」の拠点、神戸で
ものづくり、ことづくり、
そして ずっと続くしあわせづくり

Engineering Products, Services, and Sustainable Happiness @The Port of Sapience, Kobe


 このビジョンのもと、失敗や多様性を許容できる風土づくり、自主性、成長、目的を尊重し、内なる動機づけに基づく活動の支援、想像を創造へ発展させることができるための基礎教育の充実、志ある世界の若者が集うことができる知の拠点づくりを目指し、日々邁進していく所存です。

 私たちのこの決意の証として、創立100周年記念事業を実施し、多くの方々に、私たちの思いを伝えたいと思っております。皆様におかれましては、どうかこの創立100周年記念事業にご理解をいただき、格段のご支援、ご高配を賜りますようお願い申し上げます。

神戸大学大学院工学研究科長・工学部長 小池 淳司