工学部GCP オーストラリア海外派遣プログラム(2025年度-体験記②)

CSL見学報告

工学部 電気電子工学科 3年
孫 源 さん

私の思う見学の目的は、生物、化学分野の技術を実際に産業にどのように応用しているかを認識して、では自分の先行している学問はどのように社会に役立っているのか、と考える契機を得ることである。

この製薬会社(CSL)は1994年に設立され、それ以来ずっと拡張、成長を続けている大規模な製薬製造拠点である。血漿(献血者から採取。購入したり寄付してもらったり)を原料とし、そこに含まれるタンパク質を分離・精製することで医薬品を製造している。

主要製品は3種類で、プリビレジェン(免疫グロブリン製剤:癌治療後などで免疫機能が低下した患者向け)、ハイセンター(同じくIG製剤: Immunoglobulin)、アルブレックス(アルブミン製剤:大量出血患者向け)が中心となっている。

ー中略ー

ここはRMITのラボのような学内の施設ではなくて、完全に会社なので、企業秘密にもつながりうることから、写真撮影が制限されていた。自分が印象に残ったのは、施設を設立して販売が軌道に乗るまでの間にも、また新たに施設を増設してさらなる増産を目論んでいたという話である。自分ならすぐ現状に満足してしまって、変革を起こそうという気にならないだろうと思った。現状維持ではなく常に上昇志向であることが素晴らしいと思った。

Nissan Casting Australia Plant見学報告

工学部 機械工学科 3年
奥 勝喜 さん

図1 NCAPでの製造部品

2026年3月12日,日産キャスティング工場(Nissan Casting Australia Plant ,NCAP)を見学した。 日産は30年ほど前には,オーストラリアで自動車の最終組立を行い,現地生産した自動車を販売していたが,現在はこのNCAPのみを残し撤退している。NCAPでは,主にダイキャスト(Die-cast)と呼ばれる,高温で溶かした金属を金型に流し込み,冷却した後部品を取り出し,研磨など加工をして整形することで,図1のような自動車部品を製作している。

工場内部では一貫体制が敷かれており,鋳造,加工,品質検査までが一貫した流れに沿って効率的に生産されていた。NCAPの従業員内に,KAIZEN item sheetというものがあり,従業員全員の持ち場で,問題となっていたことを挙げ,その問題への解決方法,対処後の効果を定性的に評価できるシートである。このような工場内の生産性向上を従業員全員が意識して行うことができる環境作りを体感した。NCAPでは多様な異国籍を持つ従業員たちが働いており,従業員の団結力を高めるための効果的な取り組みだと感じた。NCAPで生産した部品にAustralian madeの印として,カンガルーのマークを入れている。品質を担保する上でも,このような取り組みが貢献していると考える。

また,生産効率の観点について見学中に気づきを得た。自動車工場では,ほぼすべての作業を機械が行うものだと思っていたが,自分が思っていたよりも機械化は進んでおらず,機械が組立加工,研磨加工などをしている様子も見られたが,従業員が工場内で作業する様子が数多く見られた。機械で置き換えられる仕事もあると思うが,やはり人間が作業を行う方が効率が良かったり,経済的であったりするのかもしれないと感じた。

工学部GCP 報告「シンクロトロン」

工学部 機械工学科 3年
柳本 知輝 さん

電子を加速させることで生じる高強度の電磁波を用いた様々な対象を分析する施設だった。対象は、人体・生物・ウイルス・バッテリー・絵画・原子・タンパク質にわたる。例えば、人体を対象にした場合について紹介する。私たちが普段目にするMRI は数秒静止する必要があり、また写真しかとることが出来ない。一方、シンクロトロンを利用した場合、電磁波が高強度が故、より分解能が高い写真や動画をとることが可能である。こうした技術を用いてガン研究が進められている。

また、各元素はそれぞれ異なる波⾧の電磁波に反応する性質を用いれば、生物の元素の分布を調べることが可能である。実際にカエルの元素の分布の写真を見ることが来た。また、分子やたんぱく質の構造を分析することが可能であり、昨今ではコロナウィルスの構造をいち早く解明した研究所の一つだったらしい。

これまで、高校物理ではサイクロトロン、ベータトロン、大学の電磁気学でシンクロトロンといった様々な加速器の仕組みを学習する機会はあったがこれらをどのように利用するのかについてほとんど知らなかったことに気づかされた訪問となった。

CSIRO メルボルン支部 見学報告

—科学と経済を繋ぐ、オーストラリア最大級の国立研究機関—

工学部 機械工学科 3年
早川 隼太朗

【概要】 オーストラリア最大の国立総合研究機関であるCSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)のメルボルン支部を訪問した。同支部では、主に選鉱・鉱物加工のプロセス解析からスラリー(鉱物懸濁液)の輸送技術に至るまで、同国の基幹産業を支える最先端研究が行われている。

■1. スラリータンク研究

図1:タンク内の旋回流と粒子巻上イメージ

~装置侵食の解明と高度な巻き上げ制御~  鉱物加工の現場では、羽根車を用いて流体内 に強固な旋回流を生み出し、鉱物粒子を含んだ「スラリー」を沈降させることなく一様に巻き上 げる技術が欠かせない。しかし、固形粒子を含むスラリーの流動は激しい機械侵食(エロージョン)を引き起こし、装置の耐用年数を大幅に縮める原因となる。CSIRO では、精密な小型模型を用いて侵食現象の高度な再現・流動解析を実施し、耐久性と効率性を 兼ね備えた最適設計を行っている。

 

■2. スラリーパイプ制御

図2:パイプライン内のオンライン解析

~流動学を用いたリアルタイム省エネ管理~ スラリーを長距離輸送するパイプライン技術においては、内部での鉱物堆積(配管詰まり)を防ぎつつ、安定的に流送することが重要な課題 となる。 CSIROのシステムでは、レオロジー(流動学)に基づき、管内のスラリー密度・圧力・流速などのデータをリアルタイムかつオンライン上でモニタリングする技術が確立されている。これにより、詰まりのリスクを極限まで低 減させると同時に、水や電力資源の消費量を大幅に削減する省エネ運用の実現に成功している。

■まとめ

今回のCSIROメルボルン支部見学を通じて、 最先端の科学技術が単なる基礎研究にとどまら ず、エネルギー削減や資源効率化といった経済的・国家的利益へ直接寄与している現場を体感することができた。科学知見と基幹産業をシームレスに繋ぐ同機構の役割は、今後の資源産業の持続可能性を支える上で極めて重要な意味を持つといえる。

   

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